馬手(めて)が右手 弓手(ゆんで)が左手 「匕首」

昨日も朝から雨。

思いついたことがあって寝床に置いている品物の「付属品」を探していましたがどこにもそれが見当たりません。

それに関わる大切な品ですので記憶を辿りながら探索するもまったくその姿は見つかりませんね。

奥方にそれ、「紙が無い!!」を連呼して一緒に探してもらいましたがその日はとうとうそれは出現しませんでした。

 

その「紙」とは刀剣の登録証の事ですが刀剣そのものに(刃渡り15㎝以上の美術品~骨董価値のありそうなもの・・・その区分けは曖昧)都道府県教育委員会の審査を受けて「登録を受ける」ことによりその所持・譲渡・相続を認められる・・・というものでいわゆる刀剣とセット同体であるべきもの。

それがナイとなると特に移動時にたまたまおまわりさんの職質にあったりすると面倒なことになるかも・・・といった感じ。

自宅にそれを置きっ放しにしているのならさほど問題とはなりませんが(否それが発覚すれば状況と程度の差はあれ何かしらお咎めを受けましょう)。

 

探索の際、別の「紙」が出てきました。

それを眺めて「なるほどね」とあらためてその目に留まった語彙についてその元となる文字を示して奥方に「何て読む?」と。

それが「匕」ですが「わからない」と。主婦なら読めるかも・・・と言う具合でしたがダメでした。

ではコレは?と「匙」の字を提示するとすんなり読んでくれました。

要はその「匕」は単体では「saji」と読むのですがそのまま

「hi」と読むこともあります。

それが匕首(ひしゅ)。

またの読みを「aikuchi」=合口です。

ワープロで「あいくち」で変換すればまずは「匕首」と出てくるでしょうがその「匕」とはその昔中国のそれの形状からだといいます。

以前、お多賀さん近くで杓子について記したことがありましたがこの「匕」も形状はそれと同じようなもの。

先端が鋭利になった殺傷能力の高い暗殺道具としてそのカタチが成立したのでしょうが、日本におけるそれは要は短刀の部類で

「合口」とは「鍔がなくて(柄と鞘が)ピッタリ合う」から来ています。

「あいくち」が「匕首」というのは歴史が凝縮しているの感がして面白い。中国発祥のものとは全くカタチを異にします。

 

画像の短刀は女子の嫁入り道具、懐刀の躰の如く感じますが、刀身の厚みは他の脇差の類よりもぶ厚く、鎧通しのようにも感じます。

どちらかで武士にその所持に関しては「遠慮される」(みっともない)の如く表現されている方の記述を拝見しましたが、鎧通しの所持は戦場での組討には必携です。

相手の鎧と鎧の間にそれを刺し入れて、弱ったところを首を掻き切るというのがその流れですからね。

 

そして現代人にとってさらに面白い「右と左」の表現を。

右を「馬手 めて」、左手を「弓手 ゆんで」と。

文字通り馬の手綱を持つ手と弓を持つ手のことですが、日本人すべての右利き文化の匂いが漂います。

右翼に気を付けろ」(またはこちら)などとかつて記しましたが、右からの攻め手には脆弱であることがここでもわかります。

 

関西人は左利きの人をこぞって奇異の目で見て、いちいちその件に一言いわなくては気が済まないものだといいます。

「あんたギッチョなの?」。

 

奥方がどちらかで視聴した番組の中で知ったとのことですが、それを聞いて納得。

私はトーキョーは雑多な地方文化の混成、大阪には延々と歴史と文化(右利き文化)が流れているからだろうと推測したのでした。

 

時として戦場の兵(つわもの)たちは二本差しを左にそして右に組討用の刺刀を帯留めに上下逆にして装着したといいます。

イザという時に瞬時に鞘から抜く必要があったのでした。

近距離戦では「先に抜く」こと・・・勝負所になりますからね。

 

体のどちら側に留める(佩く)かは決まりがなく、各個人の好き好きではありますが、鎧通しを右側に留めることが流行ったことから鎧通しのことを「馬手差し」(めてざし 右手差し)とも言ったそう。

私もそれを「なんちゃって」体感しましたがやはり右側に逆は結構に「早い」を感じました。倍は違うかも。

 

画像には「備州長船祐定 永正六年二月」の銘がありますが、祐定は偽物(ぎぶつ)が多いといいますので何ともいえません。

その件無視して祐定といえば顕如さんの奥さんの姉で武田信玄の奥さん、三条夫人の嫁入り刀(懐刀)を思い出します。

それは以前浜松城の展示コーナーで拝見。

ちなみに姉妹の長女は細川晴元の奥さんです。

 

そんなこんなで色々とその銘(永正六1509年)に思いを馳せて時間ばかりが経っていたわけです。

 

帯留の金具が可変になっていますが、「どちらに佩いても」というところでしょうか。

未だかつて私はその戦闘の経験がありませんのでそのベストがどうであるのかまったくわかりません。

 

最後の画像がその登録証。

「ひ首」となっていますが、この世界ならではで通用する語でしょうね。

尚、匕首は15㎝以下でも持ち歩けば最低でも一晩はお泊りしなくてはならないかも知れないかなりヤバい代物。

要は暗殺道具ですからね(女性の場合は概ね自害用)。

息子の中高校時代、それを持ち出しはしないかと冷や冷やしたものです。