さりげなく佇む古品 當麻寺 石手水舟

先日テレビで目にした神社の「狛犬専」。

なかなかそのスジの世界にお詳しくハマっているご様子。

 

墓石墓塔に対して美的感覚を抱く方は少なからずいらっしゃいますね。よってそのジャンルもなかなかOKと感じたものでした。

さすがに先日記した「墓場系ギャル」などはあり得ないとは思いますが「狛犬にときめく」などという方なら居そうな気がします。

石仏等は数ある「追っかけ」の中でも居場所はハッキリしていますので突然の訪問でも今流行のストーカー的執着であってもそれを「愛でる」という目的は達成できますし、お相手(被葬者)からは突然の訪問(参詣)であったとしてもむしろ喜ばれることは必定です。

 

この頃は「撮り鉄」による各迷惑行為についてよく報じられるようになりましたが、石塔石仏ならば時間も場所も制約はありませんね。

だいたい忌々しい雑踏と喧噪からはまず大抵は離れることができて一石二鳥、撮影のための場所取りなどという他者との争いからも離れられますね。

 

というワケで私もコレにハマれば面白いかも・・・とおすすめしたい追っかけ撮影コレクターは、石香炉や石棺もいいですが「舟」でしたらかなり地味ですが「専門書」の存在を知りません。

これを掘り下げて研究すればスグ学者さん専門家ですね。

 

大きい意味では石塔石仏等の石像美術のカテゴリーになるのでしょうが、この「舟」(あるいは「船」表記)はやはり神社仏閣には付き物です。

 

こちらは舟(ふね)の読みでいいのですが當麻寺のそれには表記「石手水舟」(いしちょうずぶね)とあります。

これは舟の如く石を刳り穿って水を溜めておくので「舟」。

どちらのお寺にも神社にも備わっていますがまったく当たり前のようにさりげなく置かれなお実際に使われています。

 

「手も心も洗いその手を合わせてお参りしましょう」という趣旨なのでしょうが拙寺ではそれよりもお墓参り用の意味合いが強いのかと。

 

ところが現在の日本ではその「舟」に関する掘り下げというか興味が向かないのかどちらのものもその由来等の銘記説明はありませんね。時代が新しくて新設のものなのか、古い時代に寄贈されたものなのかよくわかりません。

なんとなく置かれていて感動に繋がらないからかも知れませんね。

 

先日の寺遠足ではあの當麻寺本堂の階段前で参加者の集合写真を撮影したのでしたが、そちらから視界に入る本堂前には古い「手水舟」があります。

やはり現役で水をたたえ、尚紹介文一つなし。

このカタチは今世に溢れる「手水舟」の超がつくほどオーソドックスで一見したところ珍しさナシ。

しかし水舟のこのタイプのカタチのものとしては日本最古の部類といいます。

 

「南無阿弥陀佛 奉施入 當麻寺 

石手水舟壱居 右為二親幽儀往生 

佛土兼法界衆生 平等利益又自身 

決定証大菩提 施入如件

  元徳三年辛巳正(1331)月日 大施主  僧寂心 尼心妙

                 大工藤井延清 各敬白」

 

本堂側に13行にわたって上記の文言が刻まれています。

施主は在俗の夫婦が出家して寄贈した(川勝氏)といいます。

藤井姓の石大工の名について特筆すべきはこちらの藤井延清

とは別に那智勝浦の青岸渡寺の宝篋印塔(1322)―重要文化財―に藤井景成という名が登場しこの藤井一統は当時の石大工系の職人としては著名な系列だったことが想像できます。

ただし不詳です。 

 

 

④も當麻寺。例の石灯籠の脇にありますが、やはり説明なし。

⑤は大谷祖廟本堂前にある黒鞍馬石の手水石。

ご存知鞍馬石は庭園の石としては高価なもの。こちらに置かれたその経緯や歴史というものは記されていませんでしたが大谷祖廟ではその「価値」について文言がありました。

 

⑥が拙寺の水屋。

「釘浦山」の山号が入っています。

かなり以前、排水のために底部に穴を開けてしまいましたが・・・