カラビナの進化の過程を見る 人間がいかにミスを・・

カラビナとは登山用品のこと。たくさんのカラビナをハーネス(腰巻ベルト)にぶら下げて歩くと他のグッズ其々が当たって音をたてるので、総称して「ガチャガチャ」なんどいう呼び方もあります。先の御嶽山ではそのようなスタイルのレスキューの装備を見かけました。

 

私は昔、お遊び程度にハマったクライミングウォール(ボルダリング)で得た知識を大木系の木の伐採に使用、岩場ではなく高木の、いわゆるツリークライミングの実戦で各クライミングギアの使用方法を習得していきました。

 

岩場であろうが木であろうが、「フォール」(落ちること)=「死」ですので「最新の機材と細心の注意」は必携です。

何しろ身体を「万有引力」に逆らって高所での絶対的「確保」が約束されなくてはお話になりませんので。

 

クライミング機材はハッキリ言って新しいモノがより安心ですが、最新の機能性のあるものが出ていれば尚いいですね。

それほど、この世界でも日々機能は発展しています。

 

カラビナは金属製のリングのことで、よくキーホルダーなどでそのオモチャが出回っています。キーをホールドするに脱着が便利であるのと同様、身体を高所で移動する際の脱着の利便性を考慮した道具です。

 

固定して緊縛すれば安心であることは間違いありませんが、それでは移動したり作業をすることは難しくなってしまいます。

よって「確保が確実」とは矛盾しますが、「簡単に外せる」事も重要な機能なのです。

 

木の上ではハーケンという金具を打ち込むことはしませんのでカラビナの使用はハーネスに繋げた「スリング」というバンドの先につけて木の枝に回して身体を固定したり「エイト環」という懸垂下降する器具とハーネス、そしてザイルを繋げたりします。

 

事故が起こるのは殆ど登攀者のミスですね。器具の間違った使用もあると思いますが、やはり「勘違いと偶然」のウェイトが高いと思います。勘違いは絶対に避けては通れない人間のポカですが(関係ないロープ、ザイルへのかけ違い等)、注意深く臆病に、念入りな確認を怠りなく遂行していけばその事故は少なくなりましょう。しかし、完璧にその「人の性質」から逃れることはできないでしょう。

仁和寺の法師の勘違いは遠距離の徒歩を徒労にさせましたが、高所での勘違いは致命的です。

私の大ポカの過去を記せばザイルの支点に一杯まで身体を寄せる前に枝が折れて落下し、ろっ骨を折ったということです。

 

このカラビナというものの「進化」を見ているととても面白いのです。その歴史はまるで人がミスを犯すということへの対応であるように感じます。

私がそのようなお遊びを始めた頃のカラビナは非常に簡単にリングのゲートの開け閉めが出来るタイプでした(①はニュータイプですがこのようにシンプルなものでした)。

 

「グランドフォール」という落下途中、ロープにテンションがかからないようなまっさかさまの如くの墜落時にカラビナそのものが物理的に破損しての墜死の経験から、まず、荷重耐力を強くしたものが改良されて市場に現われます。

 

その後、ちょっとした外からの力でゲートが開いてしまい、ザイルが外れるという事案が頻出したため、スクリューねじ式のロックが登場しました。

私は一度、「勝手に」オープンしたゲートのために木から数メートル落下しています。あと1度はゲートに挟まって今にも外れそうなザイルが通る下降器を降下直前に目にして、下降を中断したこともありました。ハッキリ言ってあのタイプはよく開きます。開くと何故かザイルが外れようとするのです。不思議なこと、この上ないです。あそこには「悪魔や鬼」が潜んでいますね。まあ地上でも同様なのでしょうが、あの場所でのちょっとした間違いはドキドキものです。

 

その後にゲートのネジ(スクリュー)を緩めたり閉めたりという作業が親指では難しい(凍結時「固着が厳しく動かない」)という理由で今度はバネ式で回転しロックと解除がワンタッチでできるタイプが出てきます。

親指でその作業のできるスグレものです。③のスクリューを合わせないとオープンしません。


そうなると①解除して②オープンというダブルアクションになりますのでより安心に見えます。しかしそれでも事故が起きたようです。

たまたま何かの力によって①と②が同時進行し、尚続けてザイルが外れたそうです。

 

そこで改良されたカラビナが上記②~⑥.⑤⑥の如く、ゲートをロックする機能を追加しています。

このトリプルアクションへの進化はゲートが知らないうちに開くという偶然を極限まで微小としました。すべての動作が片手でできるようになっています。

このカラビナの進化の歴史には、多様な失敗と反省そして多くの事故死がその陰にあったのでした。まぁ、それでも絶対に事故は無くならないでしょうね。


「鬼ども」は信じられないような状況を用意しています。

 

私は左腕関節の痛みで当分高いところに登る気はしませんが、ハーネスと下降器を繋げるカラビナは「これ!」と購入したものです。

勿論高所ではそれ以外に木と身体を結ぶスリングバンドを使用します。ダブルの確保が基本です。