所詮こんなものか 田沼意次のイメージ

「イメージ」という語、よく見聞きします。

それは「経験に極めて似通った経験」でありいわば目の前に起こった経験では無くてあくまでもそれは「感覚的」な「連想」ですね。「心」が勝手に決めつけようとする分野です。

 

 自分の知っている(経験した)ことすべてとそれ以外の人から聞いたこと、小説や本で読んだ歴史の登場人物等、<肌で感じ>てそれが自分なりに増幅してその「イメージ」というものが確立していくのでしょう。

 

 よって一旦その像が心に描かれてしまうとなかなかそれを拭い去る事は難しいものです。

 

 牧之原市教育委員会の学芸員、松下氏が常駐している仕事場に行く機会がありました。

彼はスタッフと小学校前のプレハブに缶詰になって相変わらず夥しい数の宮下遺跡から発掘された遺物の検証作業を行っていました。

 

 別件で訪問した中、彼との雑談で先日放映された「時代劇見た?」という話になりました。

「見た見た、ひっくり返りそうになった」と応じたものです。

 

 この時代劇は相当以前から放映されていたものでそれらのシリーズですね。

当時は池波正太郎のしっかりした原作の元、主人公「藤枝梅安」が殺し屋となって活躍するテレビ番組。

「口入屋」「香具師」等、現代ではあまり耳にしない職人も登場し、毎週楽しみにしたものです。

 

 一世を風靡した時代劇でしたが続編がだんだんと無茶苦茶さに拍車がかかって、またスペシャルワンパターンから来る飽きから殆ど忘れかかっていた番組でしたが先日どういうわけか新メンバーによるそのシリーズ続編が放映されたというわけです。

 

 荒唐無稽的アホらしいストーリー中、悪役連の役職が幕府「側用人」とか「老中」という職でした。だいたいこの手の時代劇でその役職が並べば、もしかすると・・・と嫌な気分がしていましたが、名前はまったく違っていたもののその家紋たるや「七曜紋」。

コレって「田沼意次?」を連想させんばかりの演出です。

 

 松下さんは先日、講演の演題で田沼意次について、現在では見直されて「わいろ」「悪人」のイメージは無くなっていると話してきたばかりだったとのこと、あまりにも短絡的なそのイメージの創出にがっかりさせられたと。

 

 テレビ局の製作現場などおそらく何も考えていませんでしょうし、誰かがちょっとしたイメージでそれを提案したりすれば、「イイねそれ!」的なノリだけで決まってしまうのでしょうね。

 

 それとも最初から田沼をイメージして仕上げて、「こりゃマズいんじゃないっすか?」など誰かがちゃちゃ入れて名前を変えていたりして・・・

 

 まぁ田沼意次のイメージも相変わらずそんなものなのでしょうね。一旦固まったものはそう簡単には拭えません。

名誉挽回までもう少し時間が必要です。

 

 画像①②は松下氏の職場。宮下遺跡発掘品の山。

③④は番組キャプチャー、「七曜紋」の証拠。