世逃げる 世投げる でなくて 沙る~よなげる    

それにしても札幌の繁華街での爆発事故の映像は凄かったです。あの無茶苦茶ともいえる現場惨状を見てよく亡くなった人が出なかったものだとその偶然と幸運についても驚きました。

そして当初の予想された出火場所とは違って不動産屋さんの従業員が失火原因というのも。

 

「へ~え なるほど」と思ったのは大手の賃貸専門店だったということ。賃貸に供する部屋は前居住者の「臭い消し」と「殺菌」ということでスプレー剤の使用にて対応していたのですね。それにしてもお手軽で安直な方法でした。

しかし畳替えしてクリーナーを入れて念入りなお掃除はしているのですよねぇ・・・? ちょっと疑わしく思ってしまいました。

 

私どもはその映像がお茶の間に飛び込んできた時から「失火責任法」について語っていました。

これは明治時代に制定された法律ですが、民法の「損害賠償責任」(709条)をナシにしてチャラとしてしまうもの(刑法の失火罪は別)。

ただし「重大な過失」規定があってそう認定されればさらにそれが「ナシ」となって結局は709条適用となるワケですね。

 

あの被害額のすべてを計算するとなると、普通の地場の居酒屋としたら各新聞に「失火のお詫び」なる印刷物を折り込んで手打ちとなるところでしょうが、まぁ面目は立ちませんね。

ところが上場企業の支店の従業員のミスが原因となれば話は違ってきます。

これは「重大な過失」の有無を検証する以前に会社の信用に関わることですので弁済は100%に近くなるのではないでしょうか。それ以外でしたら正気の沙汰とは思えないいわゆる会社経営の躰をなさない状態といえましょう。何より大切な信用というものを無くします。

 

そもそも大きな会社ですから火災保険+特約の類は分厚く入っているはずでしょうし会社としても痛みはないかも知れませんね。痛い思いをしたのは忘年会を楽しんでいた方たちだけということで。

 

ちなみにスプレー缶を廃棄する際は必ず缶に穴を空けますが私は家の中でそれをやったことはありません。

恐ろしい光景を目の当たりにして更なる学習をさせていただきました。

 

さて昨日は97歳のお婆さんの家族葬が榛原でありました。

法名に「沙」という字を入れさせていただきましたが、この字は今風、最近の女子の命名に使用頻度の高い「可愛げ」な文字です。

石偏の「すな」と殆ど同意ですが「さんずい」というところがミソですね。「水辺の際の細かい砂」の意です。

 

昨日朝まで続いた雨は日が昇るに従ってさらっと止んでスカッと晴れわたりました。気温も比較的高く牧之原は最高の空気に包まれました。

あたかも埃、ウイルス等あらゆる「悪いもの」が洗われたような気持ちとなったのですが、その「沙」という文字はまさにその雰囲気を醸し出します。

「水辺の際の細かい砂」というものは波の力によってサラサラと異物を濾して浄化してくれます。

「沙る」はたとえとしてお米をといだり、川で砂金を採取する如くの動詞ですね。

要は善智識としての故人の法名がこれからの私たちへ向けた作用となることを表しました。

 

「沙」といえば2つ思い起こします。

①に仏教用語の「沙羅双樹」と②歴史の中頻出の「沙汰」なる語ですね。

①は釈迦入滅でお馴染み、平家物語の冒頭でも耳に馴染んでいる語です。

 

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 

 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす 

 おごれる人も久しからず ただ春の世の夢のごとし 

 たけき者も遂には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ」

 

釈迦が亡くなった際に頭北西面に安置された釈迦の寝台の東西南北に沙羅の木が二つづつあったという伝承からその件「沙羅双樹」というのですがこの場合は完全な当て字です。

ちなみに私ども葬儀で「紙華」が供えられますがそちらが沙羅を象ったものになります。

 

②の「沙汰」は「所務沙汰」等の武家社会の所領裁判制のシステムがありますが、要は裁断のことで「沙汰する、沙汰がある」などと言いました。そこから沙汰がないことを「無沙汰」と言って裁断ナシの意。

後世色々と派生し今は大抵「長期間の便りや挨拶がないこと」を表す「御無沙汰」の使用頻度が高いですね。

 

表記「よなげる」なる語が水で砂をとぐような行為をイメージして「浄化する選別するキレイにする」という意になるのですが面白いと思うのは「淘汰」という語のそれぞれの文字「淘」も「汰」もそれと同等の意味があるということです。

 

どちらも「さんずい」です。

水がキレイでないと始まらないということでしょう。

源信さん(恵心僧都)の幼少期(千菊丸)の弁当箱事件(浄穢不二)ではありませんが・・・。

 

上記①②画像は昨日の地頭方。

クリアな視界、駿河湾の向こうに白い富士山が。

水はやはり碧くキレイです。

③は吉田榛原地区の火葬場近くから見た静岡空港越しに頭を覗かせる富士。④に管制塔が見えます。

 

⑤⑥画像が拙寺の衝立、「釈迦涅槃図」。

沙羅双樹が描かれています。

沙羅は日本では生育が無理なため「夏つばき」をそのイメージ代用として植えているお寺があります。