超ボリューム感と歴史に合掌   為因寺宝篋印塔

過去の我が国の歴史(日本史)の授業、教科書等の記述は私たちが高校で習ったあたりのものからは相当変わっているそうです。

歴史という過去の事案であっても古文書の発見や解釈によって「新事実」が浮かび上がってきますので、当然のことでしょう。

ただし明治維新周辺の近現代史のウェイトを強めようという歴史教育の変更があるとすれば個人的にはつまらないことだと思います。

世界との関わりを歴史の中で得るということが主たる理由のようですが、歴史・文化の面白味はそこには無いと思います。

列強との関わりの中翻弄されての開国、尊王攘夷、倒幕、王政復古は泥臭いカネまみれの一部の恣意的な方向性に集約されていきます。

 

特に明治維新からの近代というものは一言で「戦争の歴史」です。それらのために犠牲を強いられた国民と対外的戦争行為への反省があるのであればまだしも、富国強兵論をぶちかまされて民族的な憎悪の芽生えを助長するようなものであっては困ります。ちなみにそれは私の大学入試で日本史を選択していましたが中でもとびっきり近代史については苦手だったこともあるでしょう。

 

高山寺の明恵上人の墓域にあったズッシリ型の宝篋印塔に似た宝塔が単体で鎮座するお寺があります。

高山寺の街道は京都と日本海側の小浜を結ぶ道ですが、山の中を縫うような道です。私は太秦から一条通に出て一条山越通を北上しました。

 

その高山寺の手前に谷を西側から望む立地となりますが為因寺という浄土宗のお寺です。

前身は高山寺の塔頭寺院(華厳宗)だったようで廃寺となり改宗してこの地に建てられたようです。

 

廃寺となった寺は善妙寺という尼寺で、後鳥羽上皇が倒幕の旗を掲げるも北条政子の檄の許に集結した御家人に一蹴されたという承久の乱にて刑死・敗死した公家の妻たちが出家してその寺に集ったといいます。

浄土宗の寺としての再建も天正期で古いお寺ですので境内には古仏の整列に眼が留まります(場所はここ)。

 

しかし前述の宝篋印塔は触れることができるほど身近な場所にあって感激しきり。とても高山寺の墓域(中には入れません)にあった宝篋印塔と酷似していて、幼児玩具のレゴのよう。

重量感迫ります。世に多くの宝篋印塔がありますが、この高山寺の系統のものが古い形式ですね。

 

苔の付き方では高山寺で味はありますが、この寺は東側に開けた谷に面していて、陽当りが抜群にいいのです。どちらでも苔や樹木下の変色に古色を感じ騙されがちになりますが・・・

 

この宝篋印塔は明治維新直後あの「お約束」の廃仏毀釈で打ち壊されそうになったようで、それを免れるために近くの高尾小学校に埋められていたそうです。それを後世発掘したとのこと。

相輪部分が損傷して「輪」が足りないのはそのためでしょうか。

 

四隅の隅飾りの形状が分離型であるところが特色です。

落下防止用にソケット(凸凹の合わせ)があるのか無いのか、いじってみたくなりましたがそこは堪えます。

そしてまた隅飾りの上向き直角具合にその古さを感じて合掌しました。

ちなみにその隅飾りが外に開いてくると「新しめ」を思います。

 

この塔は別名「阿難塔」。墓碑正面にそうあります。

裏面には読みにくいですが文永二年乙丑(1265)八月八日建之とあるようです。

「阿難」は釈迦の弟子で釈迦が当初は拒んだという女人の出家について釈迦を説得してそれを成就するなど比丘尼の道を開いた人でした。よっておそらく明恵上人は夫を亡くした妻たちに向かって「阿難」への敬愛と彼を中心にした仏法を説いたのでしょう。

 

画像4段目左は高尾中学校の方。小学校とは隣接しています。

4段目②と③は高山寺明恵上人墓域の宝篋印塔。

最後の画像は阿弥陀経(小無量寿経)冒頭に出てくる「阿難」。

大無量寿経含め三部経には頻出する名です。

 

為因寺に向かうに駐車場はありません。道は狭く大型車も通過しますので路駐はできません。各臨機応変にどうぞ。

 

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コメント: 2
  • #1

    小山昭治 (水曜日, 03 8月 2016 10:11)

    先月 平田寺の宝物蔵へ入る機会を得ました。久しぶりに入りました。
    宝篋印塔を久しぶりに見て、こんなに大きかったかなーと感じました。
    人間の記憶はいい加減です。寺の裏にあった時は小さく見えました。
    その他の書きものや絵草紙など今まで見てなかったものも見ることができました。
    (後鳥羽上皇の名前の入った書き物やその孫の上皇、小夜の中山の絵草紙など。)
    あるところにはあるんだと感心のみ。

  • #2

    今井一光 (水曜日, 03 8月 2016 19:15)

    ありがとうございます。
    スゴイ!!さすがです。
    私は未だ実際に目の前で見た事がありません。
    いつか御縁があるでしょう。