かつては武門の崇敬を集めた 新羅善神堂 今人はいず

大津市役所背後の山は「長等山」といわれて園城寺の寺域。

京都山科を結ぶ「長等山トンネル」やその山を貫く琵琶湖疏水としてもその名を聞くことがあります。

京都盆地に付属するようにある山科の盆地を形成する、標高は350m弱ながら要衝的山系です。

要はこの山を一超えすれば「入京」ということになります。

 

園城寺といえば多くの付属寺院と立派な伽藍をイメージします。

門前には土産物屋や駐車場が整備、観光バスで乗り付けた数多の客が拝観料500円という手ごろな散策経費ということもあって境内に吸い込まれていきます。

しかし、それらの散策よりも人によっては「裏道がイイ」という方も多いと思います。こちらからの長良山散策コースは何と言っても「タダ」。そのかわり道は殆ど整備されていませんし、迷えば相当無意味な歩きを強いられます。雨が降ったあとに水が出ると話になりませんが、「人混みよりこっち」という方にはおすすめですね。

 

昨日記した弘文天皇陵のスグ山側の森の中へどうぞ(場所はここ)。

この鬱蒼とした木々の中に園城寺の守護神ともいわれる新羅善神堂という神社があります。ここならば道悪でもなく簡単です。

唐から帰国した園城寺の開祖円珍が新羅の神―新羅明神を祀って以来、源氏の崇拝を受けたことで知られています。

 

まさかこの様な場所に国宝の社殿がひっそりと建っていることなどなかなかピンときません。かつては武運と加護を祈願しに多くの武士たちの崇敬を集めたことを物語るように、あたかも城の如く、全面は石垣で囲われています。石垣も崩れて、殆ど手が入っていないようです。まあ年数回草刈程度は・・・というレベルでしょうか。今時「武運祈願」などという人はいないというわけで。

 

社殿境内にあがる門があったであろう場所は階段とクイックターンの虎口状。左側の社務所の如く建つ建物を囲う構造物もイイ味出しています。

立ち入り禁止の看板が記されていてそれ以上の入場はやめて外観のみを。今ある建物は国宝指定の神社造り。

貞和三年(1347)に足利尊氏が寄進しています。

こういう場所も悪くないですね。何と言っても拝観料無料、それで国宝。

さりげなく森に佇む姿を見て「新羅」ならず「森羅」という言葉があう場所です。