親鸞聖人の墓 蓮如上人生誕地 元大谷 崇泰院

現在の「大谷」の親鸞聖人の廟といえば、お東でいえば「大谷祖廟」、お西でいえば「大谷本廟」ということになっています。

ただし「普通」に「○○の墓」というように「親鸞聖人」のそれがあるお寺があります。知恩院近くの崇泰院(そうたいいん)です。

 

 それら経緯について。

現在は大谷の地に真宗系各派の親鸞聖人の「廟堂」がありますが、そのように分かれる以前、遡ること鎌倉時代になります。

 

 親鸞聖人が九十才にて命終し、遺言-

「某(それがし) 閉眼せば、賀茂河にいれて魚にあたうべし」-

を反故にして、鳥辺野、大谷の地に埋葬したのは当時のお弟子さんや子息のあまりにも常識的な習いでありました。

 

 1262年に聖人が没して、11年を経た1272年に親鸞聖人の末娘である覚信尼が夫の小野宮禅念の所有地「吉水の北」(現在の崇泰院 場所はここ)に墳墓と六角の廟堂を建てて御真影を安置しました。

そちらで親鸞聖人の遺族が代々に渡って廟堂の護持管理をする「留守職」という代表権を得て宗門としての基礎としました。

 

 三代目の留守職の覚如上人の時に初めて「本願寺」を名乗るようになってから、蓮如上人までが雌伏の時、そして蓮如さんが中興となります。

以後、顕如聖人時代の石山本願寺、二人の息子たちによる東西分流を経て、戦国動乱のほぼ終わる1603年頃まで当寺は「大谷廟堂」として保護されていました。

 

 慶長八年(1603)に、家康は知恩院を母の於大の方(伝通院)の菩提寺とするために七万三千石を寄進して知恩院の大改修工事にあたりました(知恩院慶長の恢弘)。

 

 知恩院の寺領の拡大とともに「本願寺」の居場所は無くなり、移動を余儀なくされたわけですが、本願寺の去った地に知恩院再建普請奉行の竹村丹後守九兵衛道清が崇泰院を建てした。「崇泰」とは竹村丹後守の戒名ですね。

よって「元の大谷本願寺御廟」ということから代々の墓碑はそのまま残り、崇泰院さんは「元大谷」と呼ばれるようになりました。

 

 真宗、本願寺は「廟」と「御真影」の二本柱で発展した宗派ですが漠然とした「廟」という観念は聖人が前述の如く当初、「魚に与えてOK」と仰っているように「こだわるな」ですので、「まぁそれはそれでいい」のですが、こうして「コレが聖人のお墓です」と眼前にするということはいかにも新鮮で有り難く感じます。

 

 墓碑は五輪塔形式ではありますがちょっと異形です。

ベースの地輪には蓮鉢の如くの彫があります。

その上の水輪は宝篋印塔の塔身と同様「サイコロ」で五輪塔の円球ではありません。

その手の五輪塔は各所で目にすることがありますが、その上に重なる二段の火輪にはお目にかかるのは初めてです。

日頃目にする五輪塔とは明らかに違いますね。

「W火輪」は上の方が一回り小さくなってバランスを意識はしているようです。

上部には風輪と空輪を乗せる台座のような「加工」が施されています。

 

 そもそも真宗は「五輪塔は使わない=塔婆を立てない」ので、そもそもどうでもいいことですが、最初の遺族の気持ちは目に見える形で墓標が記されて、それも「五輪塔」みたいなもので、そのうえ、他の墓石の形態とは違うというのはそれはそれで面白いことと感じた次第です。

 

 どこかでも記しましたが五輪塔を模したものが塔婆であり、その規模が大きくなると「塔」になります。

ですから三重塔や五重塔などが真宗寺院に無いのも同様ですが、これらはすべて亡き人への「追善供養」ということになります(「塔」は仏舎利を納める「墓」でした)。

 

 今では相当混乱していますが(坊さんが悪い・・・)「追善供養」についての考え方が真宗に無いのは、阿弥陀様の働きが、「平生業成」であり、浄土はまた必定、既に確定されている亡き人の姿について、度々の「追善」は「阿弥陀さま」への「疑いの心」、はたまた「二心」「背信」に繋がるとしてその語彙は使用しないのです。

要は『亡き人は「確定」しているのだから、おなたが「確定」しなくてはならない』ということでしょうか。

 

 心の問題であって「かたち」ではありますが、「供養」ではなく感謝・御恩・ご縁を一処に喜び今生きるわれらの「生」を確認しようとただただ「南無阿弥陀仏」にこだわるのです。

 

 次回当山のツアー、「大谷祖廟お参り」には是非こちらの「元大谷」を紹介したいと思っています。

大谷祖廟からはごく近い場所で山の中にあるものではありませんので時間をとることもストレスもありません。

「南無阿弥陀仏」とともに真宗の歴史についてお伝えしたいですね。

 

 最後の画像は蓮如さん誕生の際に産湯に使ったといわれる井戸です。

 

 参拝はあいにく「ひょいと簡単に」というわけにはいきません。

詳細は元大谷崇泰院さんのサイトをご覧ください。

特に真宗系のご住職さま、是非にこのようなご縁あるお寺を御檀家さんに紹介していただき、お参りくださればよろしいのかと思います。