大根の不思議な効能  吉田兼好

砂地を利用した当地の冬場の食材、ダイコンについて何度か記していますが、~4/61/30トウの立った(花を付けた)大根は養分が花・種に回ってしまい、決しておいしい代物ではないのですが、ちょうど冬大根が終わって今の季節、出回ってくるのが「春大根」です。昨日も御裾分けをいただいて賞味させていただきました。

一番おいしいのは冬大根に決まっていますが、「春大根」は切ると気のせいか「真っ白」ではなく放射状に広がる繊維質が透けて見えます。あと、少し固めですね。

「冬」に慣れきっている人は違和感があるでしょうが、なかなかイケますよ。

食感が多少「冬」と違うくらいで敬遠するのは勿体ないことですね。

何しろ殆ど「薬」に近いほど効用が期待できる健康食品なのですから。

各「大根の効能」等ググッていただければと存じます。

 

 さて、大根の不思議な効能について語ったお話といえば兼好法師の「徒然草」、六十八段です。

意味不明のオチですが、きっとこれは大根を食べると健康上の外的(病気)から肉体を守ってくれるのだということを

吉田兼好が話を創作脚色して示唆しているようにも感じます。

 

 

「筑紫に、なにがしの押領使などいふやうなる者のありけるが、土大根をよろづにいみじき薬とて、朝ごとに二つづゝ焼きて食ひける事、年久しくなりぬ。

 
ある時、館の内に人もなかりける隙をはかりて、
敵襲ひ来りて、かこみ攻めけるに、館の内に兵二人出で来て、命を惜しまず戦ひて、皆追ひ返してけり。

 

いと不思議に覚えて、「日ごろここにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふは、いかなる人ぞ」と問ひければ、
「年来頼みて、朝な朝な召しつる土大根らに候う」と言ひて、失せにけり。
深く信を致しぬれば、かゝる徳もありけるにこそ」

 

筑紫に、押領使(平安期の地方派遣の警察-武士のはしり)がいました。
この人は、大根が何にでも効く素晴らしい薬であるとして、
長年毎朝2本づつ焼いて食べ続けていました。

 

ある時、城館に兵隊がいない間隙を突いて、敵が襲ってきて、館を包囲しました。
だれもいない館内と思っていると、館の中から兵が2人出てきて命を惜しまず戦って、とうとう敵を蹴散らしてしまいました。

 

不思議に思って
「日頃ここにいらっしゃる人達でないような方々、このように奮戦していただきましたが、どなた様でしょうか?」と聴くと、「長年あなたが頼んで召し上がってくださったダイコンですよ」と言って姿を消しました。
深く健康を信頼していたので、このような徳があったのでありましょう。

 

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コメント: 2
  • #1

    小山昭治 (金曜日, 21 6月 2013 09:23)

    大根もあがめられることがあるものですね。
    たかが大根、されど大根。
    食べ物は何でもありがたくいただくのがよろしいようで。
    しかし 大根が助けてくれたとは初めて知りました。
    しかも大根役者ではなく大した働き者で。
    「大根の恩返し」千両役者!

  • #2

    今井一光 (金曜日, 21 6月 2013 19:28)

    ありがとうございます。
    長期に渡って毎朝2本の大根を焼いて食べ続ける人の
    御加護(健康)get!ですからね。
    真似をしようも絶対にできないことですね。
    まぁ朝は家族みんなで大根を食べていたくらいのところ
    なのでしょうが、大根が兵士となって現われて、それが
    「無茶苦茶強かった」などというこの段については
    「それではこれまでの話はいったい何だったの」というくらい
    意表をつくものでした。
    兼好=健康という語呂合わせ、騙されたと思って大根をこれまで以上に増していただくことにします。