おかみそり 帰敬式

当流には15年ほど前から「帰敬式実践運動」が始まって、本山だけでなく各お寺にて、住職による帰敬式が執行できるようになりました。

 

帰敬式(おかみそり)は、息を引き取って(亡くなって)から「剃刀の儀」を行うものと誤解されがちですが、生死の時期まったく関係ありません。

ついこの間まで通夜といえばなぜか安全カミソリが用意されていたものでした。(そんな時は私はさりげなく下の方に下げてしまいます)

 

法名をいただくということは仏弟子としての「名のり」であるわけですが実はキリスト教の洗礼名に似ていて、その人が生きている時にその名をつけて問題はないのです。

当流ではむしろ「南無阿弥陀仏の名号を中心にした新しい生活のスタート」として帰敬式を捉えていますので、生前にその受式をされることを強く強く推奨しています。

 

安全カミソリは最近見かけなくなりましたが、それは事前に私が用意している「その道具」について葬祭場の方がご配慮くださっていると思います。

魔除けの守り刀と誤解されるのは、私、「甚だ迷惑―まよいまどう」いたしますが私なりの帰敬式用のものを持参して使用しています。

 

といっても実際に髪を剃るわけではないので先代は紫の房が着いたステンレス製の刃物様のものを桐箱から厳かに取り出して儀式を執り行っていました。

要は剃るフリをするのみですから何でもいいのですが・・・。

 

おそらく安全カミソリの時代は先々代まででしょうが、私の場合はというと・・・

当初は通夜に招かれましたら、数打品でしょうが刃渡り25cmの「備州長船祐定」(びしゅうおさふねすけさだ)を持参していました。

時代は永禄六年の刻印があります。

勿論「真剣」で独特の緊張感の中、文字通り真剣勝負の執行です。

コレむやみに持ち歩けば当然に「銃刀法違反」になります。 

 

しかしながら刃の部分だけで25㎝とはいささか大きすぎました。

そのことを知っている人の口利きで、一回り小振り(17cm)の懐刀を製作いただき有り難いことに寄進していただきました。

 

その方は大澤寺が古くから親戚付き合いをさせていただいている榛原静波の笠原家とつながりの深い、刀剣の研師で神主の中村氏です。

 

専門は刀剣と神主の世界ですので歴史への見識も深く、色々と教わることがございます。

刀銘は「無量寿」。作は「伊豆住貞人」で全国のお寺を探してもオリジナルの帰敬式用の刀があるというのは少しばかり珍しいのでは。

 

これも勿論刃がついていますよ。

ちなみに「無量寿」とは阿弥陀如来、南無阿弥陀仏のことでもあります。

イメージとしては姫さまの嫁入り道具のように小振りでかわいらしい刀です。

声をかけていただければお見せします。

帰敬式について 東本願寺

http://www.higashihonganji.or.jp/kikyoshiki/honganji/index.html